自分はいま、残業をまったくしていません。いつも16時30分ごろには家に帰っています。そう決めたきっかけは、娘に言われた一言でした。一度きりのドイツ出張で見た光景も、会社のためではなく自分のために働くという考えに重なるものとして、心に残っています。
最近は「ドイツが日本のGDPを抜いた」「ドイツ人は日本人より短い時間しか働いていない」といった話をよく見かけます。そうした数字も少し確かめながら、自分が見たこと、考えたこと、選んだことを書いておきます。
サイト管理人残業をやめたきっかけは、娘の一言でした。
娘の一言で、目的が変わった

働いていると、仕事がとても大事なものに思えてくることがあります。重要度が高いと、錯覚してしまうのです。自分にも、そういう経験があります。でも、ふとそうではないと気づいてやめてみたら、やはり、そこまで大事なものではありませんでした。
その「やめてみた」のが、転職です。ただ、最初からいまの形を目指していたわけではありません。
はじめは、キャリアアップのつもりでした。転職先の内定ももらい、当時の会社にも辞めることを伝えていました。そんなとき、ふと娘に聞いてみたのです。
「新しい会社と今の会社、どっちがいいと思う?」
娘は「新しい会社!」と答えました。なぜか聞くと、こう言いました。
「だって、もっとパパと遊べるようになるんでしょ?」
娘は、転職すれば一緒にいる時間が増えると思っていたのです。その一言で、自分が過ちを犯していることに気づきました。そこから、目的がキャリアアップではなく、キャリアダウンに変わりました。
結局、そのときは前の会社にとどまることにしました。ところが1年後くらいに、突然仕事が忙しくなりだしました。それが最後のひと押しになって、会社を辞めて転職しました。
サイト管理人キャリアアップのための転職が、娘の一言で、家族との時間のための転職に変わりました。
16時半に帰るようになって

いまは、残業はまったくしていません。帰ってからは、家族と一緒に食事をしたり、テレビを見たり、ダラダラしています。夕ごはんを作る日もあります。週2回のテレワークの日は、子どもの習い事にも対応しています。
いちばん大きいのは、毎日、子どもと一緒に布団に入れるようになったことです。前はそれが確実ではありませんでした。
年収は下がりました。でも、後悔はしていません。目的は達成したからです。妻も、前より家族の時間を作れているので、肯定的に受け止めてくれていると思います。10年後くらいまでには、もう一段ギアを下げようと思っています。
早く帰ることに、周りの目がまったくないわけではありません。なんとなくはあります。でも、そのために転職したのだから、それに負けたら意味がありません。周りから「そういう人だ」と思われたら、まあ、それまでです。
ドイツ出張で見た、16時の事務所(自分の考えに重なった光景)

残業をやめたのは娘の一言がきっかけですが、働き方について、もうひとつ心に残っている光景があります。ドイツには、仕事で一度だけ行ったことがあります。出張で、1週間ほどでした。
いちばん印象に残っているのは、現地の事務所の夕方です。16時には、事務所にほとんど人がいませんでした。日本では見たことがない光景でした。
驚いたのは、時間が早いことだけではありません。納期が迫っていても、帰る人は帰り、休憩する人は休憩していました。その姿を見て、この人たちは会社のためではなく、自分のために働いているのだな、と感じました。人生を自分でコントロールできている、と言ってもいいかもしれません。会社のためではなく自分のために働く。それは、自分の考えに重なるものでした。
数字で見ても、ドイツで働く人の年間の労働時間は、日本より短く出ています。
年間の労働時間(就業者・2024年):日本 1,617時間、ドイツ 1,331時間(下の図1)
名目GDP(ドル換算):2023年にドイツが日本を上回りました(下の図2)。2024年もドイツ 約4兆6,856億ドル、日本 約4兆1,869億ドルで同じ順番です
労働時間は国どうしの比較には向かないと注記されたデータで、GDPは為替の動きにも左右されます。


ただ、自分にとって大きいのは、数字より、自分の目で見たあの夕方の事務所です。自分もいまは、いつも16時30分ごろに帰宅しています。会社のためではなく自分のために働くことを、これからも心がけていきたいと思っています。
チップと日曜日

ドイツで不便だったのは、日曜日にそもそも店がやっていなかったことです。
これは、たまたまではなく、法律の話です。ドイツでは店の営業時間を州ごとの法律で決めていて、たとえば2025年8月に施行されたバイエルン州の閉店法は、店は日曜日と祝日には閉めていなければならない、と定めています。その土台には、日曜日と祝日を「労働の休息の日」として法律で守る、というドイツ基本法の規定があります。
がっかりしたこともあります。チップです。サービスが良いなと思ったところで、チップを払うかどうか聞かれました。正直に言うと、少しがっかりしました。
その点、日本はチップを払わなくても、客として店に行けばサービスが良い。これは日本の良いところだと思います。でも、働く側から見ると、それは悪いことかもしれません。日本で働いている人を見ていると、とても大変そうだと思うからです。
それでも、もし日本の店が日曜日に閉まるようになったとしても、自分は受け入れられると思います。
ドイツと日本は、根っこが近いと思う

日曜日の閉店を受け入れられると思うのは、ドイツ人と日本人は根本的に近いと、自分が思っているからです。
いちばん近いと思うのは、真面目さです。これは父から聞いた話で、自分が見たわけではありません。父の会社に、設備が梱包されて送られてきたことがあったそうです。そのとき、アメリカ人がハンマーで箱を壊して開けようとして、それを止めようとしたのは、ドイツ人と日本人だけだったらしいです。世界中の拠点には、必ず日本人かドイツ人が配置されていたらしい、とも聞きました。
伝え聞いた話なので、細かいところは確かめていません。ほかにも、戦争で味方だったこと、自動車産業が盛んなことなど、近いと思うところはいくつもあります。
ドイツ人や日本人がみんなそうだ、と言いたいわけではありません。一度の出張と父の話から、自分がそう感じている、という感想です。
子どもへの申し送り

この話を書いておきたかったのは、子どもに伝えたいことがあるからです。
働きはじめると、仕事はとても大事なものに見えてきます。周りが遅くまで残っていれば、自分も残るのが当たり前に思えてきます。お金や肩書きが増える方を選ぶのが、正しいように感じるかもしれません。
仕事や資本主義、同調圧力や周りの目に、飲み込まれないでほしい。
自分にとって正しいと思える選択肢を、自分で選んでほしい。
仕事が大事に思えてきたら、一度立ち止まって、本当にそうかを確かめてほしい。やめてみたら、そうでもないこともある。
自分は、キャリアアップをやめて、家族と一緒にいる時間を選びました。それが正解だと押しつけるつもりはありません。同じ道を選ぶ必要もありません。ただ、自分で選んだという感覚だけは、手放さないでほしいと思っています。
自分が人生で大事にしていることは、前に別の記事にまとめてあります。

おわりに
娘の「もっとパパと遊べるようになるんでしょ?」。自分の働き方は、その一言で変わりました。一度きりの1週間の出張で見た16時の事務所は、会社のためではなく自分のために働くという考えに重なる光景として、いまも心に残っています。
ドイツと日本は、根っこのところでは近いと思っています。会社のためではなく自分のために働く、ということを、これからも心がけていきます。まずは、16時半に帰り続けるところからです。
最終見直し日:2026年10月11日
出典
数字と制度は、2026年10月11日に次のページで確認しました。
- 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2026」6-1 一人当たり平均年間総実労働時間(就業者)(2024年 日本1,617時間・ドイツ1,331時間。出典はOECD、2025年8月現在。国どうしの水準比較には適さないとの注記あり)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2026/06/d2026_6G-1.pdf
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2026/index.html - 内閣府 経済社会総合研究所「2024年度(令和6年度)国民経済計算年次推計 参考資料6.国際比較」(名目GDP ドル換算。2023年 ドイツ4兆5,622億ドル・日本4兆3,854億ドル、2024年 ドイツ4兆6,856億ドル・日本4兆1,869億ドル)
https://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/2024/sankou/pdf/kokusaihikaku_20251223.pdf - 内閣府 政策統括官(経済財政分析担当)「世界経済の潮流 2024年Ⅱ」第1-1-1図 各国の名目GDP規模の推移(IMF(2024)により作成、市場レートベース)
https://www5.cao.go.jp/j-j/sekai_chouryuu/sa24-02/pdf/s2-24.pdf - バイエルン州 官報(GVBl. 2025 S. 246)「バイエルン州閉店法」(2025年8月1日施行。店は日曜日と法定祝日に閉めることを定める)
https://www.verkuendung-bayern.de/gvbl/2025-246/ - ドイツ基本法 第140条(ワイマール憲法第139条を取り込み、日曜日と祝日を労働の休息の日として法律で保護)
https://www.gesetze-im-internet.de/gg/art_140.html

